「政治心理学」誌にみる学際化の進展         (『社会心理学研究』、第10巻2号、1995年、134-146頁)    本論文では国際政治心理学会の学会誌である"Political Psychology"誌に1979 年から93年まで掲載された全論文に対して数量的内容分析を行い、いわゆる学際 領域がどのように形成されているかについて政治学と心理学の境界領域を事例研 究した。  本論文では「学際化の2段階モデル」として時間経過に応じて専門化した政治 学と心理学が単に同居している「多角的段階」から、出身領域に関わらず理論や 方法論が共有されている「学際的段階」へと進展することを仮定した。  考察の結果、このような「2段階モデル」は共同研究の増加や研究手法の共有 など部分的にしか起きておらず、逆に研究題材の選択では最近になるほど出身学 問によって棲み分けが生じてきていることが分かった。  このように境界領域が単に交流を持って協働しても本質的な学問の融合は自然 に起きず、離反する側面も出てくるため、教育プログラムの作成など人為的な調 整が必要である。大学院生への夏期研修プログラムなどを通して、このような努 力は米国でも行われつつある。